通信の歴史と未来(1)

無線技術の進歩は目を見張るものがあり,ハイテク社会,高度情報社会の真っ只中で私たちは毎日生きている.

 

通信・電信技術は,科学,工学にとどまらず宇宙工学,ロボット工学の分野においても技術革新の中心的な役割を果たしてきた.

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特に近年,なくてはならない物として携帯電話がある.その携帯電話,モバイルインターネットの普及により無線情報技術大きく躍進を遂げた.けれど,予想できなかったことではない.なぜなら,“トレンド”に従っただけである.世の中にはもともと大小様々な傾向や変化が存在している.私たちはこれを事象と呼ぶ.制度改革や新しい発見,発明,技術革新などで新たに生じたり消えたりする風潮がある一方で,数百年かけて変化するようなゆったりとした流れも存在する.複数の事象の流れが相互に影響しあって生み出される “トレンド” 慣性の高い変化であると私は考える.

 

 

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電波は周知のとおり,1864年にイギリスの生んだ科学者マクスウェル(James Clerk Maxwell)によって電磁波(電波)の存在を唱えて160年が経つ.

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James_Clerk_Maxwell

 

その後のヘルツ(Heinrich Rudolph Hertz)からアンテナの歴史は始まると言ってよい.ヘルツは彼の師ヘルムホルツの勧めによってアカデミーの懸賞論文であったマクスウェルの実験的検証に挑戦した.彼が1888年に初めて火花放電の実験によって電波の存在を証明してから7年が過ぎた1895年に,イタリアのマルコーニ(Guglielmo Marconi)がこの電磁波を通信に利用する.発明当時の到達距離はわずか2km程度だったのが,今や電波は各国の遠距離通信はもちろん,宇宙の彼方への探査衛星などに利用され,驚くべき到達距離に及んでいる.この長距離通信の実現は,使用する周波数帯域の変化というトレンドが影響している.長距離通信用として,安定した伝搬特性を持つ長波の利用から,指向性の向上が容易な短波通信の利用である.

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アマチュア無線の歴史は古い

1918年にアメリカで波長200m以下の中短波帯をアマチュアに開放した事をきっかけに,短波が意外にも遠方通信に適していることが発見された.これが短波帯全盛時代のきっかけを作ったのである.現在でも遠洋の船舶通信,国際線航空機用の通信,国際放送及びアマチュア無線に広く利用されている.

 

このように,19世紀後半から1920年代までは,古典電磁気学の確率と電波の性質の解明がされた時期である.