通信の歴史と未来(3)

レーダー技術の発展

第二次世界大戦中に発展したレーダ技術は戦後多方面で利用されることになる.大戦中から進められていたテレビジョンの研究はマイクロ波技術を駆使することによって戦後間もなくテレビジョン放送の実用化へと花開く.理由としてディジタル技術・コンピュータ技術の急速な発達による信号処理能力の向上,半導体技術の発展に伴うマイクロ波発振の安定化がある.

マイクロ波とは,3GHzから30GHz,波長にして10cmから1cmのいわゆるセンチ波を指すことが多いが厳密な定義はない.

その後,通信容量増大の要求に伴い使用周波数は次第に高周波に移行する.問題になのは,超高周波無線通信の欠点は通信可能距離に限界があることである.

それを解決したのが,衛星通信と衛星放送である.

 

衛星通信の始まり

 

 

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衛星通信とは|スカパーJSATの衛星通信サービス

衛星を用いた放送は放送の広域性,同時性から大きな優位性を持っている.1963年静止衛星が打ち上げられ60年代後半以降全地球的に24時間の大容量通信が実用され始めた.

 

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静止通信衛星 シンコム 2号


衛星通信の一つの欠点をあげるとするならば,静止衛星の高度が約36,000kmと遠く,電波が地上から衛星を経て再び地上に戻って来るだけで約0.25秒を要しリアルタイムの電話には不向きであるということである.

 

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宇宙でも光通信が行われれば,地上の基地局は必要なくなるのでは?

prtimes.jp

そのため,国内の大容量有線通信回線の必要がさけばれた.米国コーニング社の研究者によって開発された,石英ガラスを用いた光ファイバによる高速長距離通信の始まりである.関連する多くの光エレクトロニクスの発展により1980年代後半には電波による通信をはるかにしのぐ大容量の長距離光通信が可能であることが明らかとなった.さらに驚くべきことには,大陸間の海底光ファイバ通信方式が実現するに至って,性能,経済性,安定性において衛星通信を凌駕することになった.静止衛星における時間遅れが無いことも大きなメリットであった.

 

なぜ無線通信が衰弱しなかったのだろうか.

それは移動体通信,特に個人を対象としたいわゆるパーソナル通信の登場である.“いつでも,どこでも,だれとでも”の標語に表されるように,時間と空間の制限を越えた存在は,ライフスタイルのみならず産業構造も大きく変えたからである!

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現代人の人権の1つ

その顕著なのが,第四世代のLTEスマートフォンだと私は考える.LTEの名称は,[Long Term Evolution]で,それまでの技術実生とは異なる名前を持っているからだ.LTEは2010年からサービスが導入され,従来技術であるWCDMA/CDMA2000と比較して100倍以上となり,高品質な動画像が提供されるようになった.

LTEが統一規格になれた理由

LTEは大きな拡張性(スケーラビリティ)を持つことで,世界の統一規格になれたと考える.国や事業者によって適用可能な周波数帯が異なる場合もサンプリング速度を変えることで,柔軟に対応したのである. LTEは導入後も発展し,LTE-Advancedではさらに高速化を行うため,アンテナ数の増大,複数の異なる帯域を同時に利用するキャリアアグリゲーション,高度な変調方式の適用で最大1Gbpsと,スモールセルや複数セル協調によって処理能力を高めるなど大幅な高度化を実現している.

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LTEの電波は障害物を避け、回り込むようにして伝わる特性がある.

5Gは3つのユースケースとして,10~20Gbpsのブロードバンド,接続時間1ms以下の超低遅延,大量なデバイス接続を対象にした大規模IoTに対応している.この3つの異なるユースケースにネットワーク側もあえて論理的に分離して適用することで柔軟な対応な対応を可能としている.ネットワークスライシングと呼ばれるこの技術は,インフラ事業者がさまざまなサービス用にカスタマイズしたネットワークを提供する.一方,サードパーティはネットワークスライシングを利用することで,最適化されたネットワークインフラを自社のサービスの一部としてエンドユーザーに提供することができる.

まとめ

このように人類は電磁気学を基礎にして,通信はもとより情報,制御計測などの学問に応用され,次々と新しい無線技術を生み出してきた.しかしながら,どの技術もそれ自体が完璧且つ完全ではなく,発展には基本的な知識や実際の使用を通じて得られる経験的なノウハウを必要とする.そこで,時代において何が要求されているのか,それぞれの時代に関わった人達がどう応えて結果を積み上げてきたのかを知ることはとても重要であると考える.